評価と報酬:韓国の大企業は目標を割り振り、スタートアップは会議で決めます
韓国の人事担当者と管理職向けに、大企業とスタートアップの目標設定と評価・報酬の連動方式、それぞれの限界、制度変更時の法的手続きをまとめました。
ひと目でわかるポイント
- 大企業
- マクロ経済の見通しと過去3年の実績から目標を設定
- スタートアップ
- 過去データが乏しく、数式の代わりに評価会議
- ストレッチ目標(グーグルのOKRガイド)
- 60~70%前後の達成が目標の範囲
- 就業規則(常時10人以上)
- 賃金・昇給・賞与を就業規則に定めて届出
- 不利益変更
- 過半数労働組合または労働者過半数の同意が必要
この記事は、韓国で評価と報酬の制度を設計する人事担当者、管理職、創業者、そして大企業とスタートアップの間で転職する人事の専門家のための案内です。どちらの組織も評価を報酬に結びつけますが、目標の決め方は大きく異なります。完全に公正な制度は存在しないため、社員が理解し納得できる手続きをつくることが目標です。
評価と報酬を結びつけるジレンマ
評価を報酬と連動させる問題は、すべての組織が直面する悩みです。評価は決して完璧ではないため、そこにお金を結びつけると不公平に見えることがあります。かといって評価が報酬に影響しなければ、社員が評価を真剣に受け止めなくなるおそれがあります。
完全に公正な評価は存在しません。人の主観を完全に排除し、あらゆる職務と成果を客観的に測れる方法が生まれれば、経営学の歴史に残る大発見になるでしょう。人事部門はこの限界を認めつつ、できる限り公正で納得感のある制度を目指すべきです。
大企業の目標の決め方
韓国の大企業では、適切な数値目標を設定することが業績連動型報酬の要です。目標はふつう、グループ単位で示される為替見通しや経済成長率の予測といったマクロ経済の前提と、過去3年間の実績から出発します。そこに経営陣の戦略的な意図を加えて、最終的な数値を決めます。
こうして決めた全社目標は下へ割り振られます。事業部からチームへ、チームから個人へと下りていきます。この過程はふつう経営企画や財務の部門が主導し、人事部門はガイドラインを示して配分が妥当かを確認します。
人事部門にとって最も難しいのは、各職務を深く理解しないまま、重要業績評価指標(KPI)の配分が公正かどうかを判断しなければならない点です。売上目標が10億ウォンの営業チームを例に考えてみましょう。均等に分けるのか、個人の能力と経験に応じて差をつけるのか、役割ごとに異なる種類の目標を与えるのかを決める必要があります。人事部門はこれらの選択肢を比べて検討しなければなりません。
同じ方法がスタートアップで難しい理由
多くのスタートアップが大企業の枠組みを取り入れようとします。戦略マップを描き、各チームのKPIを会社の戦略にそろえます。基本的な考え方は同じですが、スタートアップには現実的な制約があります。
- 過去のデータがほとんどありません。設立間もない会社には参考になる実績が少ないのです。
- 市場が定まっていません。市場規模や成長率を予測しにくいことが多くあります。
- 変化が絶えません。急成長すると、目標がすぐに古くなります。
そのため、社員が納得するストレッチ目標を設定するのが難しくなります。ストレッチ目標とは、全力を尽くしてようやく達成できる水準の目標です。高すぎれば動機づけにならず、低すぎれば成長を妨げます。グーグル自身の目標と主要な結果(OKR)のガイドは、60~70%前後の達成スコアを目標の範囲とし、いつも目標を完全に達成する人は目標を十分に高く設定していないと説明しています。
評価会議(キャリブレーション)とその限界
こうした制約を避けるため、多くのスタートアップが会議形式の評価、いわゆるキャリブレーションを取り入れています。数式の代わりに管理職が集まって社員の成果と潜在力を話し合い、中核人材と低成果者を見極めてインセンティブに結びつけます。急速な変化に柔軟に対応できるのが長所です。
弱点は手続きの公正さです。どれほど客観的に会議を運営しても、結果に不満のある社員は、会社にきちんとした評価制度がないと感じることがあります。会議の進め方、参加者、判断の基準を説明しましょう。
その他の報酬の方式
- 職務給(직무급):個人の成果より、担う職務の価値に応じて賃金を決めます。客観性を高められます。
- スキル型賃金:社員が持つ能力や技術の水準に応じて賃金を決めます。技術中心のスタートアップに向いた方式です。
- 報酬と切り離した目標管理:一部の会社はOKRを成長と方向合わせのための目標設定・追跡の道具として使い、報酬は別の手続きで決めます。グーグルのガイドも、OKRは社員の評価と同じものではないと明記しています。評価の負担を減らしつつ、目標志向の文化を保てます。
制度を変えるときに守るべき法令
常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則(취업규칙)を作成し、雇用労働部(고용노동부)長官に届け出なければなりません。就業規則には、賃金の決定・計算・支払いの方法と昇給、賞与、表彰と制裁に関する事項を盛り込む必要があります(勤労基準法(근로기준법)第93条)。就業規則を作成・変更するときは、労働者の過半数で組織された労働組合、そうした労働組合がなければ労働者の過半数の意見を聴かなければなりません。労働者に不利に変更する場合は、意見の聴取にとどまらず同意を得る必要があります(第94条)。就業規則の変更届の案内も参照してください。
実務上の助言
- 組織の成熟度と文化に合わせて設計しましょう。大企業の精緻な制度をそのままスタートアップに移したり、スタートアップの柔軟なやり方を大企業に持ち込んだりすると、たいてい失敗します。
- 完璧さより、着実な改善を目指しましょう。社員の意見を集め、毎年少しずつ改善しましょう。
- 評価結果を何に使うのかを前もって決め、透明に伝えましょう。
- 評価と報酬を、個人を測って順位をつけるだけでなく、組織の戦略や望ましい価値観・行動を強める仕組みにしましょう。
正解は一つではありません。大企業の体系性とスタートアップの柔軟性を自社に合う形で組み合わせることこそ、人事の専門性が発揮されるところです。
よく目にする韓国語の用語
| 用語 | ローマ字表記 | 意味 |
|---|---|---|
| 평가보상 | pyeongga bosang | 評価と報酬を一つの制度としてまとめて呼ぶ言葉。 |
| 업적평가 | eopjeok pyeongga | 目標に対する実績を評価する業績評価。 |
| 핵심성과지표 | haeksim seonggwa jipyo | 重要業績評価指標(KPI)。 |
| 스트레치 목표 | seuteurechi mokpyo | 全力を尽くしてようやく達成できる目標。 |
| 직무급 | jingmugeup | 職務給。職務の価値に応じて決める賃金。 |
| 성과급 | seonggwageup | 成果給。成果に応じて支払うボーナス。 |
| 취업규칙 | chwieop gyuchik | 就業規則。常時10人以上の事業場が作成・届出しなければならない規則。 |
| 불이익 변경 | buriik byeongyeong | 労働者に不利な就業規則の変更。労働者の同意が必要です。 |
根拠
- 勤労基準法第93条・第94条(근로기준법 제93조·제94조):https://www.law.go.kr/법령/근로기준법
- Google re:Work「Guide: Set goals with OKRs」:https://rework.withgoogle.com/intl/en/guides/set-goals-with-okrs
このガイドは2026年10月23日時点の一般的なルールを説明したものです。法律・税務の助言ではありません。法令や書式は変わることがあるため、手続きの前に公式サイトを確認するか専門家に相談してください。

