韓国の従業員の個人情報:利用ごとの法的根拠とCCTVの設置制限
韓国の事業主向けに、同意なしで使える従業員の情報、CCTVや指紋認証機の運用ルール、保存期間、漏えい時の届出をまとめました。
ひと目でわかるポイント
- 処理の根拠
- 法令、労働契約、正当な利益、または同意
- 機微情報・固有識別情報
- 法令上の根拠か別途の同意が必要
- CCTV
- トイレや更衣室の内部は撮影禁止、録音も禁止
- 委員会・KISAへの漏えい届出
- 72時間以内(1,000人以上、機微情報、ハッキング)
- 健康診断の結果票
- 5年保存(告示物質を扱う人は30年)
- 紛争調停
- 個人情報紛争調停委員会 1833-6972
このガイドは、韓国で従業員の個人情報を扱う事業主と人事担当者を対象としています。「個人情報保護法(개인정보 보호법)」により、従業員の情報を使うたびに法的根拠が必要で、必要な分だけを集めなければなりません。内容は、2026年9月11日施行の個人情報保護法と、個人情報保護委員会(개인정보보호위원회)の「分野別個人情報保護案内書(분야별 개인정보 보호 안내서)」(2024年12月)の人事・労務編に基づいています。
4つの段階、1つの原則
個人情報保護委員会の案内書は、人事・労務の業務を、採用準備、採用決定、雇用維持、雇用終了の4つの段階に分けています。どの段階でも、個人情報保護法第15条第1項の処理根拠のいずれかが必要です。人事業務の主な根拠は次のとおりです。
- 法律に特別な規定がある場合、または法令上の義務を守るためにやむを得ない場合
- 労働契約を結ぶため、または履行するために必要な場合
- 使用者の正当な利益のために必要で、その利益が労働者の権利より明らかに優先する場合。正当な利益と相当の関連があり、合理的な範囲を超えないことが条件です。
- 労働者が同意した場合
最小限だけを収集してください。最小限の個人情報を収集したことの立証責任は使用者にあります(第16条第1項)。
同意なしで使える情報
- 法令上の義務。 労働者名簿と賃金台帳です。賃金台帳には家族手当の計算の基礎となる事項も記載します(「勤労基準法(근로기준법)」第48条)。4大保険の関係法令で必要な住民登録番号もこれに当たります。
- 労働契約の履行。 転勤、出向、休職、人事評価、福利厚生です。
- 家族手当や家族向け福利のための家族の情報。 労働者や家族の同意は必要ありません。ただし、家族の機微情報や固有識別情報には、その家族本人の別途の同意が必要です。住民登録番号は、法令に具体的な根拠がなければなりません。家族関係の証明書を出すときは、家族の住民登録番号の後半を消して発行してもらうようにしてください。
次の2種類は、常により厳しく扱われます。
- 機微情報(민감정보): 思想・信条、労働組合・政党への加入・脱退、政治的見解、健康、性生活、遺伝情報、犯罪経歴資料、特定の個人を識別するための生体認識情報、人種・民族の情報(第23条、施行令第18条)。案内書は、従業員の出産計画も機微情報に当たり得るとしています。
- 固有識別情報(고유식별정보): 住民登録番号、旅券番号、運転免許番号、外国人登録番号(第24条、施行令第19条)
どちらも法令上の根拠か、労働者の別途の同意が必要です。住民登録番号は法令に具体的な根拠が必要で、同意だけでは処理できません(第24条の2)。
転勤や昇進の事実を社外に公開するには、労働者の同意が必要です。案内書は、懲戒や解雇の内容は原則として公開しないことが望ましいとしています。
CCTV、位置追跡装置、指紋認証機
従業員が常に働く空間にデジタル機器を導入する前に、従業員の意見を聴いてください。出入りが制限された区域での勤怠管理用のCCTV、運転業務の従業員の位置を管理する装置、出入管理用の指紋認証機がその例です。常時30人以上の事業場は労使協議会(노사협의회)を置かなければならず(「勤労者参与及び協力増進に関する法律(근로자참여 및 협력증진에 관한 법률)」第4条)、事業場内の労働者監視設備の設置は労使協議会の協議事項です(第20条第1項)。機器の設置目的、仕様、運用範囲、処理する個人情報と保有期間をはっきり説明してください。
機器の運用ルールは次のとおりです。
- 上の処理根拠の範囲内でだけ使ってください。根拠がはっきりしない場合は同意を得ますが、従業員は断りにくいという点を考慮してください。
- 特定の個人を識別するための生体認識情報は機微情報なので、別途の同意が必要です。指紋認証機の代わりに入館証を使うなど、代わりの手段を用意してください。生体認識情報などの認証情報は、保存や送信のときに暗号化しなければなりません(「個人情報の安全性確保措置基準(개인정보의 안전성 확보조치 기준)」第7条第1項)。
- 不特定多数が利用する浴室、トイレ、サウナ室、更衣室の内部が見えるようにCCTVを設置することはできません(個人情報保護法第25条第2項)。録音機能も使えません(第25条第5項)。CCTVを運用するときは案内板を設置してください。
- 撮影範囲は目的に合わせて調整し、必要のないときは機器を止めてください。業務用アプリやモバイル端末管理(MDM)のソフトは、在宅勤務用も含めて、業務に必要な情報だけを収集しなければなりません。
- 正当な理由なく、設置目的と違う勤怠管理や懲戒に使ってはいけません。
- 他人どうしの会話を録音したり聴取したりすることは禁止されています(「通信秘密保護法(통신비밀보호법)」第3条)。情報通信網にある他人の秘密を侵害することも禁止されています(「情報通信網法(정보통신망법)」第49条)。
従業員の権利
従業員は、自分の個人情報の閲覧、訂正・削除、処理停止を求めることができます(個人情報保護法第35条~第37条)。10日以内に回答しなければなりません(施行令第41条・第43条・第44条)。
- 客観的な成果・実績の情報は、特別な理由がない限り公開しなければなりません。人事考課や年俸の算出根拠は、公開すると会社やほかの従業員の利益を不当に害するおそれがある場合、閲覧を制限または拒否できます(第35条第4項)。
- CCTVの映像を見せるときは、ほかの人が映らないようにモザイクをかけてください。
- 従業員本人以外から集めた情報であれば、求めに応じて、収集元、処理目的、処理停止を求める権利があることを知らせなければなりません(第20条第1項)。
保存期間
不要になった個人情報は、復元や再生ができない方法で、遅滞なく廃棄しなければなりません(第21条)。個人情報保護委員会の「標準個人情報保護指針(표준 개인정보 보호지침)」は、正当な理由がなければ5日以内に廃棄し、廃棄に関する事項を記録するよう定めています(第10条)。他の法令で保存が必要な情報は、ほかの個人情報と分けて保管しなければなりません(個人情報保護法第21条第3項)。
| 記録 | 保存期間 | 根拠 |
|---|---|---|
| 労働者名簿、労働契約書、賃金台帳など労働契約に関する重要書類 | 3年 | 勤労基準法第42条、施行令第22条 |
| 健康診断の結果票 | 5年。雇用労働部長官が告示する物質を扱う労働者は30年 | 産業安全保健法第164条、施行規則第241条第2項 |
| 年末調整の資料 | 法定申告期限が過ぎた日から5年 | 国税基本法第85条の3第2項 |
漏えいへの対応と被害の救済
個人情報処理方針には、個人情報保護責任者の氏名か、苦情を処理する部署の名称と電話番号などの連絡先を公開しなければなりません(第30条第1項)。
従業員の情報が漏えいしたら、次のことをしてください。
- 72時間以内に書面などで、該当する従業員に、漏えいした項目、時点と経緯、従業員がとれる措置などを知らせてください(第34条第1項、施行令第39条)。2026年9月11日からは、大統領令で定める漏えいの可能性を知った場合にも知らせなければなりません。
- 1,000人以上の情報が漏えいした場合、機微情報や固有識別情報が漏えいした場合、外部からの不正アクセスで漏えいした場合は、72時間以内に個人情報保護委員会または韓国インターネット振興院(한국인터넷진흥원、KISA)に届け出てください(施行令第40条)。
従業員が使える救済手段は次のとおりです。
- 個人情報侵害申告センター(개인정보침해 신고센터、局番なしの118)に侵害の事実を申告できます。
- 使用者の不当労働行為などは、地方雇用労働官署に申告できます(雇用労働部の顧客相談センター1350)。
- 個人情報紛争調停委員会(개인정보 분쟁조정위원회)に、オンラインまたは書面で調停を申し立てることができます。サイトはwww.kopico.go.kr、電話は1833-6972(平日9:00~18:00)です。
- 損害賠償を請求できます。使用者は、故意や過失がないことを立証しなければ責任を負います(第39条第1項)。故意または重大な過失で漏えいした場合、裁判所は損害額の5倍まで賠償額を定めることができます(第39条第3項)。損害額の立証が難しい場合は、3,000,000ウォン以下の法定損害賠償を請求できます(第39条の2)。
漏えい時の手順は個人情報の漏えい:通知と届出は別々、どちらも72時間以内をご覧ください。
よく目にする韓国語の用語
| 用語 | ローマ字表記 | 意味 |
|---|---|---|
| 개인정보 처리방침 | gaein jeongbo cheori bangchim | 個人情報処理方針。処理目的、保有期間、責任者の連絡先などを公開する文書です。 |
| 민감정보 | mingam jeongbo | 機微情報。健康、労働組合への加入、思想・信条、識別用の生体認識情報などです。 |
| 고유식별정보 | goyu sikbyeol jeongbo | 固有識別情報。住民登録番号、旅券番号、運転免許番号、外国人登録番号です。 |
| 정보주체 | jeongbo juche | 情報主体。処理される情報の本人で、ここでは従業員です。 |
| 노사협의회 | nosa hyeobuihoe | 労使協議会。常時30人以上の事業場に置く協議機関です。 |
| 영상정보처리기기 | yeongsang jeongbo cheori gigi | 映像情報処理機器。CCTVなどの映像装置を指す法律用語です。 |
| 파기 | pagi | 廃棄。個人情報を復元できないように消すことです。 |
| 개인정보보호위원회 | gaein jeongbo boho wiwonhoe | 個人情報保護委員会(PIPC)。韓国の個人情報保護の監督機関です。 |
| 한국인터넷진흥원 | hanguk inteonet jinheungwon | 韓国インターネット振興院(KISA)。漏えいの届出を受け、118センターを運営します。 |
| 개인정보 분쟁조정위원회 | gaein jeongbo bunjaeng jojeong wiwonhoe | 個人情報紛争調停委員会。個人情報をめぐる紛争を調停します。 |
根拠
- 個人情報保護法 第15条・第16条・第20条・第21条・第23条・第24条・第24条の2・第25条・第30条・第34条~第37条・第39条・第39条の2(개인정보 보호법): https://www.law.go.kr/법령/개인정보보호법
- 個人情報保護法施行令 第16条・第18条・第19条・第39条・第40条・第41条・第43条・第44条(개인정보 보호법 시행령): https://www.law.go.kr/법령/개인정보보호법시행령
- 個人情報保護委員会「分野別個人情報保護案内書」人事・労務編、2024年12月(분야별 개인정보 보호 안내서): https://www.pipc.go.kr/np/cop/bbs/selectBoardArticle.do?bbsId=BS217&mCode=D010030000&nttId=10898
- 標準個人情報保護指針 第10条(표준 개인정보 보호지침): https://www.law.go.kr/행정규칙/표준개인정보보호지침
- 個人情報の安全性確保措置基準 第7条(개인정보의 안전성 확보조치 기준): https://www.law.go.kr/행정규칙/개인정보의안전성확보조치기준
- 勤労者参与及び協力増進に関する法律 第4条・第20条(근로자참여 및 협력증진에 관한 법률): https://www.law.go.kr/법령/근로자참여및협력증진에관한법률
- 勤労基準法 第42条・第48条、施行令第22条(근로기준법): https://www.law.go.kr/법령/근로기준법 · https://www.law.go.kr/법령/근로기준법시행령
- 産業安全保健法 第164条、施行規則第241条(산업안전보건법): https://www.law.go.kr/법령/산업안전보건법 · https://www.law.go.kr/법령/산업안전보건법시행규칙
- 国税基本法 第85条の3(국세기본법): https://www.law.go.kr/법령/국세기본법
- 通信秘密保護法 第3条(통신비밀보호법): https://www.law.go.kr/법령/통신비밀보호법
- 情報通信網法 第49条(정보통신망 이용촉진 및 정보보호 등에 관한 법률): https://www.law.go.kr/법령/정보통신망이용촉진및정보보호등에관한법률
- 個人情報紛争調停委員会(개인정보 분쟁조정위원회): https://www.kopico.go.kr/main/main.do
- KISA個人情報侵害申告センター(개인정보침해 신고센터): https://privacy.kisa.or.kr/main.do
このガイドは2026年10月26日時点の一般的なルールを説明したものです。法律・税務の助言ではありません。法令や書式は変わることがあるため、手続きの前に公式サイトを確認するか専門家に相談してください。

