韓国のHRD:AI活用研修、スキルの再定義、動機づけの適合
韓国企業の人事・教育担当者向けに、AI導入と研修、スキルの再定義、報酬と動機の適合を2026年のデータとともにまとめました。
ひと目でわかるポイント
- AIの生産性効果を実感
- 会社員1,482人の95%(KPC、2026年7月)
- 組織の働き方の変化
- 56%、39ポイントの差
- AIの利用頻度
- 毎日62%、週1~2回以上92%
- AI研修の受講経験
- 67.5%、未経験32.5%
- 事業主負担の職業能力開発保険料
- 常時150人未満は0.25%
- KPCの2027年キーワード
- AIによる業務再設計、ヒューマンスキル、未来型リーダーシップ
このガイドは、韓国企業の人事・教育担当者と、韓国人チームの研修を担う外国人管理職向けです。筆者は人的資源開発(HRD、인적자원개발)のキーワードとして、AI、スキル、動機づけの3つを挙げています。調査の数字は2024~2026年のものです。
HRDが変わる理由
経営環境の不確実性、急速な技術の変化、職務教育の方法の変化、そして構成員の世代交代が重なり、人事担当者は働き方を見直す時期を迎えています。筆者は、HRDが研修プログラムを設計する役割から、組織の中核能力をつくるビジネスパートナーへと変わるべきだと考えています。3つのキーワードはつながっています。AIの導入は新しいスキルを求め、新しいスキルの習得には動機づけが必要です。
最近の韓国のデータがこれを示しています。韓国生産性本部(한국생산성본부、KPC)が2026年7月に会社員1,482人(教育担当者382人、一般社員1,100人)を調べたところ、95%がAIツールで生産性が上がったと答えました。57%はAIで業務時間が30%以上減ったと答え、10%以上まで含めると91%でした。しかし、AIで組織の働き方が変わったという回答は56%にとどまり、39ポイントの差がありました。KPCは2027年のHRDキーワードとして、AIを基にした業務の再設計、ヒューマンスキル、未来型リーダーシップを挙げています。
キーワード1:AIツールと研修をセットで導入する
筆者はよくある場面を例に挙げます。マーケティングチームは新しいAI顧客分析プラットフォームが出した顧客セグメントをどう読めばよいか分からず、商品企画チームはAIで作った競合分析が不正確だと気づかずに報告書に引用してしまいます。AIの導入だけに力を入れて実務での活用研修をおろそかにすると、生産性がかえって下がることがあります。
調査も期待と現実の差を示しています。Upwork Research Instituteが2024年に米国・英国・オーストラリア・カナダの労働者2,500人を調べたところ、経営幹部の96%がAIツールで生産性が上がると期待していました。しかし、AIを使う社員の47%は会社が期待する生産性をどう実現すればよいか全く分からないと答え、77%はAIツールのせいで少なくとも一つの面で生産性が下がり業務が増えたと答えました。
韓国では、AIはすでに日常の業務ツールです。KPCの2026年の調査では、毎日使う人が62%、週1~2回が30%で、合計92%でした。主な用途はコンテンツ作成、データ分析・可視化、情報検索です。教育担当者はコンテンツ作成(61.5%)とデータ分析(61.0%)、一般社員は情報検索(69%)を最も多く挙げました。AI活用研修を受けた人は67.5%で、32.5%は受けていませんでした。
HRD部門は、実習中心の研修と職務ごとのAI活用ガイドラインでこの差を縮められます。
キーワード2:変化の速い業務に合わせてスキルを定義し直す
筆者はスキルを見直したときによく出る結果を例に挙げます。経験10年を超える開発者が、最新のクラウドやAI開発フレームワークについては新人より理解が浅い一方、コミュニケーションや問題解決のようなソフトスキルでははるかに優れているというものです。財務・マーケティング・営業でも同じ変化が起きています。財務担当者は、会計の知識に加えてデータ分析とAIツールの活用能力が必要になりました。
KPCの「2025 HRDトレンドレポート」は、2024年に会社員と企業の教育担当者771人を調べた結果をもとに、AI技術の変化に関する研修課題の順位を次のように発表しました。
| 順位 | AI関連の研修課題 |
|---|---|
| 1 | 生成AI活用スキルの研修 |
| 2 | データ分析・活用の研修 |
| 3 | 技術変化に対応するアップスキリング研修 |
| 4 | 職務転換・リスキリングなどの再教育 |
1~4位はいずれも回答率が40%を超えました。
キーワード3:動機づけの適合(Motivation Fit)
Motivation Fitとは、個人を動かす要因と、組織が提供する報酬・承認の仕組みがどれだけ合っているかを指します。筆者は同じ仕事をする2つのチームを比べます。一方には成果給と昇進の機会を、もう一方には柔軟な勤務、自己啓発の支援、プロジェクトの選択権を与えます。筆者は、後者の方法の方が高い生産性と低い離職率につながりうると主張しています。
筆者の考える理由はこうです。多くの社員はAIが自分の仕事を脅かすかもしれないと不安を感じており、外的な報酬だけではその不安を和らげにくいのです。HRDは、AIツールを学ぶ間の効率低下や、AI導入の効果への疑問といった心理的な不安を解消し、内発的な動機を引き出す必要があります。
注意すべき2つの障害
- AIの基本的な理解の不足。多くの社員がAIの仕組みをよく理解しておらず、ツールの使用に苦労しています。理解がなければAIを実際の業務に生かせず、実質的な業務革新も遅れます。
- 職務ごとのAI活用の差と、個別に合わせた研修の不足。AI活用能力は職務によって差が大きく、職務に特化したAI研修の需要が高まっています。多くの社員が会社としての体系的な研修や情報共有が足りないと感じており、学ぶ意欲を下げています。
研修予算に関わる韓国のルール
韓国の事業主は、すでに雇用保険(고용보험)を通じて研修の費用を負担しています。雇用安定・職業能力開発事業(고용안정·직업능력개발사업)の保険料は事業主だけが負担します。
| 事業主 | 保険料率(事業主負担) |
|---|---|
| 常時150人未満 | 0.25% |
| 150人以上の優先支援対象企業(우선지원대상기업) | 0.45% |
| 150人以上1,000人未満(その他の企業) | 0.65% |
| 1,000人以上、国・地方自治体 | 0.85% |
法律で義務づけられた職場研修もあります。業種と規模で変わる韓国の5つの法定義務研修をご覧ください。
チェックリスト
- AIツールを導入するたびに、職務ごとの研修と活用ガイドラインを用意します。
- 職務ごとに必要なスキル(データ・AIを含む)を見直し、アップスキリング計画を立てます。
- 報酬が社員の動機と合っているか点検します:賃金、柔軟性、学習支援、仕事の選択権。
- AIへの不安について率直に話し合い、内発的な動機を育てます。
- 個人の生産性だけでなく、チームの働き方が変わったかを測ります。
- HRDを支援部門ではなく戦略的パートナーとして位置づけます。
よく目にする韓国語の用語
| 用語 | ローマ字表記 | 意味 |
|---|---|---|
| 인적자원개발 | injeok jawon gaebal | 社員を教育し能力を伸ばす活動(HRD)です。 |
| 생성형 AI | saengseonghyeong AI | 文章や画像を作り出すAIです。 |
| 업스킬링 | eopseukilling | 今の業務をよりうまく行うために新しい技術を身につけることです。 |
| 리스킬링 | riseukilling | 別の職務に移るために新しい技術を学ぶことです。 |
| 동기부여 | donggi buyeo | 働く意欲を引き出すことです。 |
| 성과급 | seonggwageup | 成果に応じて支払うボーナスです。 |
| 고용보험 | goyong boheom | 韓国の4大社会保険の一つです。 |
| 고용안정·직업능력개발사업 | goyong anjeong jigeop neungnyeok gaebal saeop | 事業主だけが払う保険料で運営される雇用保険の事業です。 |
| 우선지원대상기업 | useon jiwon daesang gieop | 政府の支援を多く受けられる中小企業中心の企業です。 |
| 한국생산성본부 | Hanguk Saengsanseong Bonbu | 毎年HRDトレンドレポートを出す機関(KPC)です。 |
根拠
- ヘラルド経済 2026年10月19日、KPC「2027 HRDトレンドレポート」の調査(헤럴드경제 「“AI 활용 업무시간 30% 단축…업무방식 변화는 56% 그쳐”」):https://biz.heraldcorp.com/article/10907621
- イーニューストゥデイ 2026年10月19日、KPCの2027年HRDキーワード(이뉴스투데이):http://www.enewstoday.co.kr/news/articleView.html?idxno=2481504
- イートゥデイ 2024年11月11日、KPC「2025 HRDトレンドレポート」(이투데이 「생산성본부, '2025 HRD 트렌드 리포트' 발간」):https://www.etoday.co.kr/news/view/2418265
- Upwork Research Institute「From Burnout to Balance: AI-Enhanced Work Models」2024年:https://www.upwork.com/research/ai-enhanced-work-models
- 雇用保険及び産業災害補償保険の保険料徴収等に関する法律施行令(고용보험 및 산업재해보상보험의 보험료징수 등에 관한 법률 시행령)第12条第1項:https://www.law.go.kr/법령/고용보험%20및%20산업재해보상보험의%20보험료징수%20등에%20관한%20법률%20시행령
このガイドは2026年10月23日時点の一般的なルールを説明したものです。法律・税務の助言ではありません。法令や書式は変わることがあるため、手続きの前に公式サイトを確認するか専門家に相談してください。

