ガイド一覧へ

賃金未払い:訴訟前に事業主の財産を仮差押えで押さえる方法

韓国で賃金を受け取れない労働者向けに、仮差押え(가압류)で事業主の財産を訴訟前に押さえる手続きと、2026年現在の費用・担保・期限をまとめました。

PAPATONY法務・コンプライアンス2026年10月23日更新約6分で読めます

ひと目でわかるポイント

申立先
財産所在地の地方法院または本案の管轄裁判所
裁判所費用
印紙10,000ウォン+送達料(当事者数×3回分)
執行期限
決定の告知を受けた日から2週間以内
不動産の税金
請求額の0.2%の登録免許税+その20%の地方教育税
本案訴訟
執行後3年間提起しないと取消し申立てが可能
無料法律支援
月平均賃金4,000,000ウォン未満:132番

韓国で賃金を払ってもらえない場合、仮差押え(가압류)を使えば、訴訟の前や訴訟中に事業主の財産を凍結し、勝訴後に回収できる財産を残しておけます。地方法院に申し立て、請求を書面で疎明し、多くの場合は担保を提供します。以下の金額と期限は2026年10月時点のものです。

なぜ先に財産を押さえるのか

賃金訴訟とその後の強制執行には時間がかかります。その間に事業主が財産を売ったり、お金を移したり、他人名義にしたりするおそれがあります。仮差押えはこれを防ぎます。民事執行法(민사집행법)では、仮差押えは金銭債権または金銭に換算できる債権のために行うことができ(第276条)、仮差押えをしなければ判決を執行できない、または執行が非常に困難になるおそれがあることが必要です(第277条)。対象は不動産、預金などの債権(채권)、有体動産(유체동산)、自動車、船舶です。

賃金未払いは犯罪でもあります。2026年10月8日から、賃金や退職時の金品を支払わない使用者は5年以下の懲役または50,000,000ウォン以下の罰金に処されることがあります(勤労基準法(근로기준법)第107条)。ただし、刑事処罰で賃金が支払われるわけではありません。回収には民事の判決や和解が必要で、それまで仮差押えが事業主の財産を守ります。

本案の請求額が30,000,000ウォン以下なら、本案訴訟はより早い少額事件(소액사건)の手続きで進みます(少額事件審判規則(소액사건심판규칙)第1条の2)。

裁判所はどう審理するか

  • 裁判所は口頭弁論なしに書面だけで決定できます(民事執行法第280条第1項)。必要なら当事者を審尋できます(民事訴訟法(민사소송법)第134条第2項、民事執行法第23条で準用)。
  • 裁判所が申立てを却下したり、先に担保の提供を命じたりしても、事業主には知らされません(第281条第3項)。
  • 申立人は、請求債権と仮差押えの理由の2点を疎明(소명)しなければなりません(第279条第2項)。賃金なら雇用契約書、給与明細、未払い額の計算書を添付します。他の債権者からの督促、最近の財産処分、事業の悪化など、財産隠しのおそれを示す事情も書きます。
  • 裁判所は、仮差押えで事業主に生じうる損害に備えて担保(담보)の提供を命じることができます(第280条第2項・第3項)。

請求額には遅延利息も含められます。退職後14日以内に支払われなかった賃金と一時金の退職金には年20%の遅延利息が付き、2025年10月23日からは在職中の定期賃金の未払いにも適用されます(勤労基準法第37条、同法施行令第17条)。

どこに、どう申し立てるか

仮差押えする物がある場所の地方法院、または本案の管轄裁判所に申し立てます(第278条)。この管轄は専属管轄なので、当事者の合意で別の裁判所にすることはできません(第21条)。

法院の電子民願センター(전자민원센터)は、申立書の記載事項として、当事者と法定代理人・訴訟代理人、申立ての趣旨(신청취지)、申立ての理由、裁判所、疎明方法、日付、記名押印または署名、添付書類、目的物の表示を挙げています。裁判所は不動産・有体動産・債権の仮差押え申立書と、仮差押え申立陳述書(가압류신청 진술서)の書式を用意しています。大法院の内部規則(재민 2003-4 第3条)では、陳述書を添付しない申立ては補正命令なしに却下されることがあります。

裁判所の窓口に提出するほか、利用者登録をしたうえで電子訴訟(전자소송、ecfs.scourt.go.kr)でも申し立てられます(民事訴訟等における電子文書利用等に関する法律(민사소송 등에서의 전자문서 이용 등에 관한 법률)第3条・第5条)。

費用と担保

項目金額
申立書の印紙(인지)10,000ウォン(支払保証委託文書の提出を同時に申し立てても10,000ウォン)
送達料(송달료)当事者の数 × 3回分
不動産:登録免許税(등록면허세)請求額の0.2%、最低6,000ウォン
不動産:地方教育税(지방교육세)登録免許税の20%(最低1,200ウォン)
不動産:登記申請手数料不動産1件につき3,000ウォン
自動車・船舶:登録免許税1件につき15,000ウォン(建設機械10,000ウォン)

不動産の税金は財産所在地の市・郡・区役所(시·군·구청)で納め、領収書を提出します。

裁判所が担保を命じた場合、決定に提供方法が書かれます。裁判所の供託所に現金を供託(공탁)するか、保険会社が発行する供託保証保険証券(공탁보증보험증권)を提出します(民事訴訟法第122条、民事訴訟規則(민사소송규칙)第22条)。不動産・自動車・債権の仮差押えでは、申立て時に支払保証委託契約の文書を出して裁判所の許可を受けることができ、時間を短縮できます(民事執行規則(민사집행규칙)第204条)。担保の割合は法律で決まっておらず、裁判所が事件ごとに金額を決めます。現金供託は担保が解除されるまで資金が拘束され、保証保険は保険料がかかります。

決定の執行

  • 急ぐ必要があります。決定が申立人に告知された日から2週間を過ぎると執行できません(第292条第2項)。執行は事業主に決定を送達する前でも可能です(第292条第3項)。
  • 不動産:裁判所が登記簿に仮差押えを記入させます(第293条)。
  • 預金などの債権:決定は、事業主の取引銀行や取引先などの第三債務者(제3채무자)に、事業主へ支払わないよう命じます(第296条第3項)。第三債務者に1週間以内に債権を認めるか、他の差押えがあるかなどを書面で陳述させるよう、裁判所に申し立てられます(第237条、第291条で準用)。
  • 有体動産:物がある場所の地方法院の執行官(집행관)に決定正本を持参し、執行官事務所の執行委任申請書に記入して手数料を払います(民事執行規則第212条)。執行官は、申立人が決定正本の送達を受けた日から14日以内に執行に着手し、同時に事業主に決定を送達します。

複数の財産を狙う場合は、財産ごとに疎明資料と費用を準備します。不動産・預金・売掛金に分けて仮差押えすれば、一つの財産が空振りになるリスクが下がります。

仮差押えの後

仮差押えは財産を凍結するだけです。本案訴訟(본안소송)で勝つ必要があります。事業主が申し立てると、裁判所は2週間以上の期間を定めて本案訴訟の提起を命じ、従わなければ仮差押えを取り消します(第287条)。執行後3年間本案訴訟を起こさなければ、事業主や利害関係人が取消しを申し立てられます(第288条第1項)。3年たっても自動的に効力が消えるわけではありませんが、放置すると取り消されるリスクがあります。事業主は決定に書かれた金額を供託して仮差押えを解くこともできます(第282条・第299条)。

勝訴したら、仮差押えした財産に強制執行(강제집행)を申し立てます。財産の価値が請求額より少ない場合や、優先する債権者がいる場合は全額を回収できないことがあります。事業主の財産を確認し続けてください。

担保と提訴命令については、本案訴訟を遅らせると仮差押えが取り消されることがありますで詳しく説明しています。

労働者のための無料法律支援

大韓法律救助公団(대한법률구조공단)は、賃金や退職金を受け取れない労働者の民事訴訟を無料で支援します。韓国に住む外国人も対象で、未払い発生当時の最終3か月の月平均賃金が4,000,000ウォン未満であることが条件です。まず地方雇用労働官署に申告(진정)します。担当の勤労監督官(근로감독관、2026年12月8日から노동감독관に名称変更)が未払い賃金等・事業主確認書(체불 임금등·사업주 확인서)を発行したら、それを持って公団を訪ねます。相談予約は132番です。敗訴した場合、相手方の訴訟費用は支援されません。

チェックリスト

  1. 雇用契約書、給与明細、入金記録、未払い額の計算書を集めます。
  2. 事業主の財産を調べます:不動産登記事項証明書(등기사항증명서)、売上の入金銀行、主な取引先。
  3. 管轄裁判所を決めます:財産所在地、または本案の管轄裁判所。
  4. 申立書、陳述書、印紙10,000ウォン、送達料を準備します。
  5. 担保命令に備えて現金または供託保証保険を準備します。
  6. 決定を受け取った日から2週間以内に執行します。
  7. 本案訴訟を遅らせずに起こします。

よく目にする韓国語の用語

用語ローマ字表記意味
가압류gaamnyu判決前に債務者の財産の処分を止める裁判所の決定です。
본안소송bonan sosongお金を受け取る権利があるかを決める本来の訴訟です。
소명somyeong証明より低い程度で、主張が事実である可能性を示すことです。
담보dambo仮差押えで債務者に生じうる損害に備えて裁判所が命じる担保です。
공탁gongtak裁判所の供託所にお金を預けることです。
공탁보증보험증권gongtak bojeung boheom jeunggwon現金供託の代わりに提出できる保証保険の証券です。
집행관jiphaenggwan有体動産の仮差押えなどを実際に行う裁判所所属の職員です。
제3채무자jesam chaemuja事業主にお金を払う義務がある銀行や取引先などです。
인지inji裁判所に書類を出すときに納める手数料です。
송달료songdallyo裁判所が書類を郵送する費用の前払い分です。

根拠

  • 民事執行法(민사집행법)第21条・第23条・第237条・第276条~第299条:https://www.law.go.kr/법령/민사집행법
  • 民事執行規則(민사집행규칙)第203条・第204条・第212条:https://www.law.go.kr/법령/민사집행규칙
  • 民事訴訟法(민사소송법)第122条・第134条:https://www.law.go.kr/법령/민사소송법
  • 民事訴訟規則(민사소송규칙)第22条:https://www.law.go.kr/법령/민사소송규칙
  • 民事訴訟等印紙法(민사소송 등 인지법)第9条第2項:https://www.law.go.kr/법령/민사소송%20등%20인지법
  • 地方税法(지방세법)第28条第1項・第151条第1項:https://www.law.go.kr/법령/지방세법
  • 少額事件審判規則(소액사건심판규칙)第1条の2:https://www.law.go.kr/법령/소액사건심판규칙
  • 民事訴訟等における電子文書利用等に関する法律(민사소송 등에서의 전자문서 이용 등에 관한 법률)第3条・第5条:https://www.law.go.kr/법령/민사소송%20등에서의%20전자문서%20이용%20등에%20관한%20법률
  • 勤労基準法(근로기준법)第37条・第107条、同法施行令第17条:https://www.law.go.kr/법령/근로기준법
  • 大韓民国法院 電子民願センター「仮差押え」(대한민국 법원 전자민원센터 「가압류」):https://www.scourt.go.kr/nm/min_4/min_4_1/index.html
  • 大法院裁判例規「保全処分申立事件の事務処理要領」(보전처분 신청사건의 사무처리요령、재민 2003-4)第3条
  • 大韓法律救助公団 法律救助対象者案内(대한법률구조공단 법률구조 대상자 안내):https://www.klac.or.kr/legalstruct/legalRescueGuide.do
  • 政策ブリーフィング「賃金未払い被害労働者への無料法律支援」2025年5月16日(정책브리핑 「임금 체불 피해 근로자 무료 법률 지원」):https://www.korea.kr/news/policyNewsView.do?newsId=148943307
  • 雇用労働部FAQ(고용노동부 FAQ 「진정·고소 이후에도 체불임금을 지급받지 못한 경우」):https://www.moel.go.kr/faq/faqView.do?seqRepeat=78

このガイドは2026年10月23日時点の一般的なルールを説明したものです。法律・税務の助言ではありません。法令や書式は変わることがあるため、手続きの前に公式サイトを確認するか専門家に相談してください。

個人情報の受託者点検依頼には告示の条文ごとに証憑を添えて回答します

取引先の点検依頼は法律上の監督手続きです。韓国で取引先の個人情報を処理する会社は、安全性確保措置基準の条文ごとに証憑を添えて回答します。

法務・コンプライアンス約6分で読めます

支払命令に異議が出たら、印紙の差額を期間内に納めないと申立ては却下されます

支払命令に債務者が異議を申し立てると、裁判所から印紙の補正命令が届きます。差額を期間内に納めなければ、支払命令の申立書は却下されます。

法務・コンプライアンス約5分で読めます

本案訴訟を先延ばしにすると、仮差押えは取り消されることがあります

債務者の財産を韓国で仮差押えする債権者は、十分な証拠があっても担保を求められることがあり、本案訴訟を遅らせると仮差押えを失うことがあります。

法務・コンプライアンス約5分で読めます

個人情報の破棄方法は法律で決まっており、確認書は5項目で足ります

不要になった個人情報は、韓国の法律が定める方法で遅滞なく破棄します。破棄日・対象・理由・方法・実施者の5項目の確認書で、破棄したことを証明します。

法務・コンプライアンス約5分で読めます