韓国の経営支援職:実務経験は法律の範囲内で積みます
韓国で会計・人事・法務・総務の職を目指す人向けに、企業が実務経験を重視する理由と、法律で制限される経験の積み方をまとめました。
ひと目でわかるポイント
- 業務経験が適応に役立ったとする企業
- 上位500社の85.4%(雇用労働部の調査、2025年)
- 企業が業務経験を評価する基準
- 職務との関連性84%、成果43.9%
- 他人の税務申告・帳簿の代行
- 登録した税理士などのみ、違反は3年以下の懲役
- 指示を受ける無償の労働
- 最低賃金は2026年10,320ウォン、2027年10,700ウォン
- 外国人
- 在留資格に合う活動か、許可を受けた活動のみ
このガイドは、韓国で会計、人事、総務、法務などの経営支援(경영지원)の仕事に就きたい人向けです。韓国に住む外国人も含みます。企業は資格だけでなく実際の業務経験を見ているので、早めに経験を積みましょう。ただし韓国の法律の範囲内で行う必要があります。資格が必要な業務があり、「無料の手伝い」が法律上は雇用にあたることがあり、外国人にはその活動に合った在留資格が必要です。数値は2026年時点のものです。
実務経験が有利な理由
2025年、雇用労働部(고용노동부)と韓国雇用情報院(한국고용정보원)が売上高上位500社を調査し、396社が回答しました。52.8%が求める人材像として専門性を挙げ、専門性は主に専攻(22.3%)、インターンなどの業務経験(19.1%)、職務関連の教育・訓練(17.4%)で評価しています。85.4%は、応募者の業務経験が入社後の組織・職務への適応に役立ったと答えました。業務経験を評価するときは、職務との関連性(84%)、経験で出した成果(43.9%)、経験の有無(39.5%)を見ます。若手社員の80.2%は、入社前の業務経験が仕事に役立ったと答えています。
応募者はおおむね二つのグループに分かれます。一方は資格を集めて応募書類を出し続けます。もう一方は、どんな形であれ実際の業務経験をつくります。6か月で電算会計・電算税務(전산회계、전산세무)とERPの資格を取っても、実際の会計業務の経験がなければ、実務の質問に教科書的な答えしかできないことが多いでしょう。
実務経験を積む方法
- 会計、人事、総務の人手が必要な非営利団体や社会的企業でボランティアをします。
- フリーランスのプラットフォームで小さな案件を受けます。ただし法律上できる業務だけにします(下の表を参照)。
- 起業イベント、業界セミナー、職種のコミュニティの集まりに参加します。企業が必要としていることを把握し、具体的な手伝いを提案します。
- 小さく始めます。週数時間のボランティアがパートタイムに、さらに正社員につながることがあります。
キャリアを変えたい中高年は、これまでの業界知識と人脈を生かせます。例えば製造業から経営支援に移りたい人は、製造業のスタートアップの経営課題を手伝いながら経営支援の実務を学べます。メンタリングや助言の役割も入り口になります。
韓国の法律の範囲で経験を積む
| 予定している活動 | ルール | 根拠 |
|---|---|---|
| 他の事業者の税務申告の代理や、申告用の帳簿作成の代行 | 税務代理(세무대리)は登録した税理士(세무사)と、登録した一部の公認会計士・弁護士だけができます。違反すると3年以下の懲役または3,000万ウォン以下の罰金です | 税理士法(세무사법)第2条・第20条・第22条 |
| 顧客のために、就業規則など労働関係法令による書類の作成や関係機関への届出の代行を業として行うこと | 公認労務士(공인노무사)だけができます。違反すると3年以下の懲役または3,000万ウォン以下の罰金です | 公認労務士法(공인노무사법)第2条・第27条・第28条 |
| お金を受け取って法律事件に関する法律相談や法律文書の作成をすること | 弁護士だけができます。違反すると7年以下の懲役または5,000万ウォン以下の罰金です | 弁護士法(변호사법)第109条 |
| 会社の指示を受けて「無料」で働くこと | 名称に関係なく法律上の労働者にあたることがあり、最低賃金が適用されます | 勤労基準法(근로기준법)第2条 |
| 外国人が韓国で行うすべての仕事 | 在留資格(체류자격)に合っている必要があります。ほかの在留資格の活動には事前の許可が必要です | 出入国管理法(출입국관리법)第18条・第20条 |
「無料」の労働は、名称ではなく実際の働き方で判断されます。雇用労働部は2025年11月、正式採用前の段階の教育生の労働者性を判断し保護するためのガイドラインを作りました。採用前の教育が実質的に新入社員の職務教育(OJT)と同じようなもので、勤怠管理などの指揮・従属的な要素があれば、その期間は労働者として認めるという趣旨です(雇用労働部の報道説明資料、2026年10月16日)。最低賃金は2026年が時給10,320ウォン、2027年1月1日からは10,700ウォンです。2027年の最低賃金10,700ウォン、2026年12月31日までに労働者へ周知が必要ですもご覧ください。
より安全なのは、非営利団体でのボランティア、報酬のあるパートタイムやインターン、資格を持つ会計・労務・法律事務所のスタッフとして働く方法です。外国人の場合は、副業やインターンを始める前に、在留資格がその活動を認めているかを出入国・外国人官署(출입국·외국인관서)に確認してください。
実際の仕事でポートフォリオをつくる
面接官は、よく整えた架空のプロジェクトより、実際に問題を解決した経験を高く評価します。小さくても実際に行った仕事のほうが、完璧な架空の事例より役に立ちます。
- 会計:教材の例題を解くより、小さな事業者のスタッフとして帳簿を整理した経験のほうが評価されます。
- 法務:教科書の事例分析より、社内スタッフやインターンとしてスタートアップの利用規約を作成したり、フリーランス契約書を確認したりした経験のほうが説得力があります。
- 人事:理論上の採用プロセス案より、小さなチームの採用を実際に進め、試行錯誤と改善を重ねた経験が注目されます。
人脈と心構え
あなたの仕事ぶりを見た人は、あなたの実力の証人です。その人たちの推薦には重みがあります。完璧な仕事を待たずに、今できることから始めましょう。経営支援はどの企業にも必要な機能なので、機会は比較的見つけやすいです。
実際に働いていると、長い就職活動の間も自信を保ちやすくなります。面接で「会計を学びました」と言うのと、「今、スタートアップの会計業務を支援しています」と言うのとでは、まったく違う印象になります。具体的で生きた事例を話せるからです。
チェックリスト
- 来月中に手伝えそうな組織を三つ書き出します。
- サービスを提案する前に、税務代理、労働関係書類の代行、法律事務にあたらないか確認します。
- 社員のように指示を受けて働くなら、労働契約書と最低賃金以上の賃金を求めます。
- 外国人の場合は、在留資格がその活動を認めているかを確認するか、先に許可を受けます。
- 案件ごとに、問題、行動、結果を記録します。
- 仕事ぶりを見てくれた人たちと連絡を取り続けます。
よく目にする韓国語の用語
| 用語 | ローマ字表記 | 意味 |
|---|---|---|
| 경영지원 | gyeongyeong jiwon | 会計、人事、総務、法務など会社運営を支える職務です。 |
| 일경험 | ilgyeongheom | インターンなど正式な就職前に積む業務経験です。 |
| 세무대리 | semu daeri | 他人の税務申告の代理や申告用の帳簿作成の代行などの業務です。 |
| 세무사 | semusa | 税務代理ができる国家資格者(税理士)です。 |
| 공인노무사 | gongin nomusa | 労働関係法令の書類作成や届出代行を業として行える国家資格者です。 |
| 근로자 | geulloja | 勤労基準法上の労働者。実際の働き方で判断されます。 |
| 최저임금 | choejeo imgeum | 法定の最低賃金。2026年は時給10,320ウォンです。 |
| 체류자격 | cheryu jagyeok | 外国人が韓国でできる活動を決める在留資格です。 |
| 체류자격 외 활동허가 | cheryu jagyeok oe hwaldong heoga | 自分の在留資格外の活動をする前に受ける許可です。 |
| 전산회계 | jeonsan hoegye | 会計ソフトの実務能力をみる韓国の資格です。 |
根拠
- 雇用労働部・韓国雇用情報院「2025年企業採用動向調査」(2025년 기업 채용동향조사、ニューシス2025年11月18日): https://mobile.newsis.com/view/NISX20251118_0003406827
- 税理士法第2条・第20条・第22条(세무사법): https://www.law.go.kr/법령/세무사법
- 公認労務士法第2条・第27条・第28条(공인노무사법): https://www.law.go.kr/법령/공인노무사법
- 弁護士法第109条(변호사법): https://www.law.go.kr/법령/변호사법
- 勤労基準法第2条(근로기준법): https://www.law.go.kr/법령/근로기준법
- 雇用労働部 報道説明資料(2026年10月16日)、正式採用前の教育生に関するガイドライン(2025年11月)(고용노동부 보도설명자료): https://www.moel.go.kr/news/enews/explain/enewsView.do?news_seq=20105
- 雇用労働部告示第2026-60号(2027年の最低賃金)・第2025-47号(2026年の最低賃金)(최저임금 고시): https://www.minimumwage.go.kr/customer/notice/view.do?bultnId=4774
- 出入国管理法第18条・第20条(출입국관리법): https://www.law.go.kr/법령/출입국관리법
このガイドは2026年10月23日時点の一般的なルールを説明したものです。法律・税務の助言ではありません。法令や書式は変わることがあるため、手続きの前に公式サイトを確認するか専門家に相談してください。

