会計・人事・法務担当者のための4つの倫理チェック
韓国の会計・人事・法務・経営支援の担当者向けに、疑わしい依頼を見分ける4つの質問、法律が定める一線、自分を守る実践方法をまとめました。
ひと目でわかるポイント
- 質問1
- 内部・外部の監査を受けても堂々としていられるか
- 質問2
- 同僚の前で処理の過程を公開しても大丈夫か
- 質問3
- この方法を後任者に教えられるか
- 質問4
- 会社の中核価値と倫理綱領に合っているか
- 虚偽の財務諸表
- 10年以下の懲役(外部監査法第39条)
- 公益通報者の解雇
- 3年以下の懲役または3,000万ウォン以下の罰金
このガイドは、韓国で会計、人事、法務、経営支援の業務を担う人と、彼らと一緒に働く外国人管理者向けです。こうした業務では、書類上は問題がなさそうでも意図が疑わしい依頼をよく受けます。4つの自己点検の質問、韓国の法律が明確に禁じる一線、依頼がおかしいと感じたときの対処法をまとめました。
迷いが生じる瞬間
四半期決算の締めを前にした場面を想像してください。上司が「今期の数字を少しだけ調整してほしい」と言います。表向きは合理的な会計処理方法の変更ですが、本当の目的は業績をよく見せることです。断れば組織での立場が気になり、受け入れれば良心が許しません。
似た場面は日々の業務でも起こります。予算執行のあいまいな支出、人事評価の公正さ、取引先との利益相反、上司の不適切な指示などです。「違法ではない」や「上司の指示だから」だけでは十分な基準になりません。倫理的な意思決定には、法令順守より高い基準が求められます。
法律が実際に求めること
企業への期待は高まっていますが、新しい規定についての一部の主張は誇張されています。2026年時点の内容は次のとおりです。
- 就業規則(취업규칙):常時10人以上の労働者を使用する使用者は、勤労基準法(근로기준법)第93条の事項を含む就業規則を届け出なければなりません。表彰と制裁、職場内いじめの予防などが含まれますが、倫理経営は必須記載事項ではありません。
- コンプライアンス・オフィサー:資産総額5,000億ウォン以上の上場会社は、遵法統制基準(준법통제기준)を設け、遵法支援人(준법지원인)を1人以上置かなければなりません。他の法律で同様の内部統制が求められる会社は除かれます(商法第542条の13)。
- 外部監査:すべての上場会社と一定基準以上の株式会社は、外部の監査人による会計監査を受けなければなりません。前事業年度を基準に、資産総額または売上高が500億ウォン以上か、資産120億ウォン以上・負債70億ウォン以上・売上高100億ウォン以上・従業員100人以上のうち2つ以上に当てはまれば対象です。
- EUのサプライチェーン規則:EU企業持続可能性デュー・ディリジェンス指令は2026年2月24日に改正されました(指令(EU) 2026/470)。現在の対象は、従業員5,000人超かつ全世界の純売上高15億ユーロ超の企業と、EU域内の純売上高が15億ユーロ超のEU域外企業です。適用は2029年7月26日からです。対象企業は取引先に情報を求めることができますが、従業員5,000人未満の取引先には、他の方法で合理的に得られない場合に限られます。
正式な規定とは別に、会計・人事・法務の担当者は会社の重要な意思決定に関わることが多く、より慎重な判断が求められます。
4つの自己点検の質問
- 監査を受けても堂々としていられるか。多くの会社には内部監査があり、上場会社は外部監査も受けます。監査人が自分の仕事を細かく調べても自信を持って説明できるか考えます。手続き、承認、証拠書類を点検する過程で、倫理的な妥当性も検証されます。
- 同僚の前で公開しても大丈夫か。同じチームや他部署で似た仕事をする人たちに処理の仕方を知られても恥ずかしくないかを考えます。同僚に恥ずかしいことなら、明らかに問題があります。
- 後任者に教えられるか。明日異動するとして、この方法をそのまま引き継ぎ「こういうときはこう処理すればよい」と言えるかを考えます。言えないなら正しい方法ではありません。
- 会社の中核価値や倫理綱領に合っているか。多くの会社にあります。普段あまり見なくても、重要な決定はこの基準に照らして判断します。
職務別によくあるジレンマ
- 会計:四半期末や年末の締めで、費用処理や売上認識の時期について「適法な範囲で調整してほしい」と目的のはっきりしない依頼を受ける場合です。越えてはならない一線があります。株式会社等の外部監査に関する法律(주식회사 등의 외부감사에 관한 법률)第39条により、会計業務の担当者が会計処理基準に違反して虚偽の財務諸表を作成・開示すると、10年以下の懲役、または違反行為で得た利益や回避した損失額の2倍~5倍の罰金に処せられます。
- 人事:採用、昇進、評価の公正さの問題です。特定の応募者への上司の関心や、評価結果の調整要求がその例です。客観的な基準と手続きを守ります。
- 法務・コンプライアンス:法的には問題がなくても倫理的に疑わしい取引や慣行です。条文だけでなく、会社の評判と社会的責任まで考えます。
- 経営支援・購買:予算執行と購買の透明性の問題で、特定の業者との関係や個人的な利害が絡む場合です。手続きの正当性と実質的な妥当性の両方を備えます。
実践の方法
- 時間を確保します。圧力を受けても「十分に検討してから回答します」と伝えます。ジレンマの場面での即断は誤りやすいものです。
- 信頼できる同僚や先輩に相談します。別の視点が視野を広げ、似た業務を長く担当した先輩の助言は特に役立ちます。
- 規定を確認します。倫理綱領、内部統制規程、業務マニュアルに似た状況の指針がすでにあることが多く、業界の模範事例や法令も参考になります。
- 決定の過程を記録します。なぜそう判断したか、どの基準を当てはめたか、誰に相談したかを残しておけば、後で説明しやすく、今もより慎重になれます。
組織がすべきこと
個人が正しく判断しようとしても、組織の支えがなければ限界があります。
- 明確な倫理基準と手続きを設け、よくあるジレンマには事例中心のマニュアルで案内します。
- 倫理相談と内部通報の窓口を設け、匿名性と報復防止を徹底して保障します。
- 経営陣が率先します。倫理経営は経営トップから始まり、意思決定とその説明の仕方に表れなければなりません。
韓国の法律は、一定の違反を通報した人を保護しています。公益申告者保護法(공익신고자 보호법)により、別表に挙げられた法律の違反を通報した人に不利益な措置をしてはならず、この別表には外部監査法も含まれます。不利益措置を受けた通報者は、1年以内に国民権益委員会(국민권익위원회)へ保護措置を申請できます。通報を理由に解雇すると、3年以下の懲役または3,000万ウォン以下の罰金に処せられることがあります。
長期的に残る価値
倫理的な選択は、短期的には損に見えるかもしれません。しかし倫理的に判断し続ける人は組織で信頼を得て、より重要な役割を任されます。自分の選択に胸を張れること自体が大きな財産です。倫理経営を実践する会社は顧客と社会の信頼を得て、それが持続可能な成長の土台になります。ESG(環境・社会・ガバナンス)への要求も、これを無視しにくくしています。
あいまいな依頼を受けたら、監査、同僚、後任者、中核価値という4つの基準で点検してください。小さな決定の積み重ねが、個人のキャリアと会社の文化をつくります。
よく目にする韓国語の用語
| 用語 | ローマ字表記 | 意味 |
|---|---|---|
| 윤리경영 | yulli gyeongyeong | 倫理経営。法律だけでなく倫理の基準で会社を運営することです。 |
| 윤리강령 | yulli gangnyeong | 倫理綱領。会社が定めた倫理的な行動基準です。 |
| 취업규칙 | chwieop gyuchik | 就業規則。常時10人以上の事業場が届け出る規則です。 |
| 준법지원인 | junbeop jiwonin | 遵法支援人。大規模上場会社が置くコンプライアンス担当者です。 |
| 외부감사 | oebu gamsa | 外部監査。独立した監査人による財務諸表の監査です。 |
| 내부통제 | naebu tongje | 内部統制。誤りや不正を防ぐ社内の規程と点検の仕組みです。 |
| 공익신고 | gongik singo | 公益申告。法律が定める違反行為の通報で、法律で保護されます。 |
| 이해충돌 | ihae chungdol | 利益相反。個人の利益と会社の利益がぶつかる状況です。 |
根拠
- 勤労基準法 第93条(근로기준법 제93조): https://www.law.go.kr/법령/근로기준법
- 商法 第542条の13、商法施行令 第39条(상법 제542조의13, 상법 시행령 제39조): https://www.law.go.kr/법령/상법
- 株式会社等の外部監査に関する法律 第4条・第39条(주식회사 등의 외부감사에 관한 법률): https://www.law.go.kr/법령/주식회사등의외부감사에관한법률
- 株式会社等の外部監査に関する法律施行令 第5条(주식회사 등의 외부감사에 관한 법률 시행령 제5조): https://www.law.go.kr/법령/주식회사등의외부감사에관한법률시행령
- 公益申告者保護法 第2条・第15条・第17条・第30条(공익신고자 보호법): https://www.law.go.kr/법령/공익신고자보호법
- EU指令 (EU) 2026/470(2026年2月24日、指令 (EU) 2024/1760 を改正): https://eur-lex.europa.eu/eli/dir/2026/470/oj/eng
このガイドは2026年10月23日時点の一般的なルールを説明したものです。法律・税務の助言ではありません。法令や書式は変わることがあるため、手続きの前に公式サイトを確認するか専門家に相談してください。

